005 実況

「はいこれ。どうぞ。」



しゅんから、紙のを手渡される。



「ありがと…?」



「知り合いの実況者さんが送ってくれたんだ。最近の主流戦術とか、前回大会の様子とか。」



FPS大会とらまき…といったところだろうか。これはありがたい。



「ありがとう。これで何とかなるかもしれん。あ、その実況者さんにもよろしくお伝えを…。」



「うん。じゃあ、また明日。あ、そうそう、これからカードゲームの実況者大会があるんだ。1時から配信されると思うから、よかったら。」



どうやら昨日のカードゲームらしい。俺で練習相手がつとまったかは…何とも言えないところだが、少しでも力になれていたら幸い。



「そうなのか。そりゃあ、がんばって。」



―――あ、それでそのかぶり物か…。



ずっと気になっていた。俊のカバンからはみ出しているクマみたいな被り物。顔出しをしていない俊にとっての必須アイテムだ。彼女のお手製なので、オンリーワン。まあ、その…うらやましい限り。



「おう、任せとけ!徹夜で調整した俺の最強コンボ、決めてやるぜ!」



「お、おう…。」



うん、徹夜はよくないと思う。





「うぁわっちっ!」



お昼ごはんにと焼きそばを作っていたら、はねた油の攻撃を受けた。右手のこうにダメージ。早急に冷やさなければ。



「あ、火止めんと…。」



ドタバタ。いつもならはねた油でも反応できるはずなのだが、少し疲れているらしい。明日のこともあるし、今日は早めに休むとしよう。


とりあえず焼きそば完成。ちょっと豪華に目玉焼きをトッピングしてみた。ついでにとばかりにごはんもよそう。洗い物の観点からワンプレート推しなので、カレーライスならぬ焼きそばライスの様相ようそう。炭水化物をおかずに炭水化物を食べていくスタイル。



―――ん?あ、そろそろ1時だ。



電池が少ない影響か、10分ほど遅れている時計が1時少し前を指している。友人の晴舞台だ。画面越しだが精いっぱい応援しよう。


テレビの電源を入れ、インターネットに接続する。



―――そういえば…大会名って…?



「えーっと…シュンカンゲームズ…カード…対戦っと。」



検索画面に入力し、ライブの動画を探す。大会名くらい聞いておけばよかった。



「あった、これか。」



テレビの画面いっぱいにクマの被り物。見慣れているとはいえ、言葉では形容しがたい感情がうまれる。中の人が俊だと思うと、余計に。


今回の参加者は8名。トーナメント形式なので、俊の出番は最大で3回だ。公式が運営しているイベントらしく、優勝賞品はプロモーションカードとのこと。昨日の会話が影響しているのだろうか。あれはいくらなんだろう、そんな思考が脳内を駆け巡っている。



「がんばれー。」



気持ちは込めたが、届くはずのない声援をおくる。

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