第38話 エンディング
今日は第二王子とトリスタンの代の卒業パーティだ。
トリスタンはオリビアをエスコートしている。今日のオリビアは髪を結い上げ、トリスタンが選んだ青いエレガントなドレスを着ている。凛として美しい。
第二王子は一人で入場した。
ひそひそ噂する参加者に混じって、熱い視線を送る令嬢もいる。
第二王子とドゥモン侯爵令嬢の婚約は解消された。来年の春、彼女はイーサンと結婚する。
父親のドゥモン侯爵は難色を示したが、婚約者を蔑ろにした第二王子に憤慨していた母親と兄が彼女の味方をしたらしい。
昨年の卒業パーティで、ドゥモン侯爵令嬢はエスコートなしだった。第二王子はマリーと一緒だったのだ。イーサンは私をエスコートしていた。
一年後の今日を、誰が予想できただろうか。
会場を見渡しながら、感慨に浸る。
私は、在校生モブとしてこの日を迎えられた。
春らしい淡い緑色のシフォンのドレスを着て、耳と首にはエメラルド。
隣にはラフさん。
ヤカでのプロポーズの後、私との婚約を兄王に報告するため、ラフさん達はエノナイへ帰った。ガスパーさんとギーさんは先に発ち、ラフさんとサンドラは私がゲラン領まで転移で送った。
エメラルドのアクセサリーは、戻ったラフさんから贈られた。エノナイらしい繊細なデザインだ。
しみじみしていると、ラフさんに引き寄せられて「踊ろう」と誘われた。
広い会場の端で、音楽に合わせてラフさんと踊る。すごく目立ってる気がするけど気にしない。
リードが上手で体が軽い。楽しくて、何曲でも踊れそうだ。
四日後には、エノナイへ発つ。
ソフィーや侍従、護衛は既に出発している。
ラフさんと私、父、サンドラとココはゲラン領まで転移し、風魔石四輪バギーを出してから先発隊と合流して、エノナイの王都へ向かう予定だ。
エノナイでは、ラフさんの兄王と王妃、両親である先代の国王夫妻にご挨拶し、建国祭で、公爵となったラフさんの婚約者として御披露目されることになっている。
◇◇◇
初めてラフさんとサンドラをヒコミテの家に招待した。
庭は春の花で色とりどりだ。
ココはサンドラを自分のかまくらに案内している。近いうちにココの家をもう少し大きく作り直そう。
ラフさんはスイちゃんに釘付けだ。
ヒコミテダンジョンで黒ヒゲのラフさんに初めて会った時、水魔ハシビロコウは見たことがないと言っていた。
動かないスイちゃんを見るラフさんも動かない。
お茶を淹れよう。苺のミルフィーユをいつもの店で買ってある。
ラフさんがいて、ココとサンドラがいて、スイちゃんがいる。美味しいお茶とケーキがある。
出会ってから、ラフさんが私の心を離れたことがない。これからもずっとそうだろう。
どうか、私も、ラフさんにとってそうであり続けられますように。
___________________
《 完結 》
次話 [番外編] イーサンのオランジェット
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます