第31話 ヒロイン来襲
ラフさんが公爵邸の賓客となって一週間。父が口説いて、ラフさんは長期滞在することになった。
(お父様お手柄!)
ラフさんは朝食を部屋で取り、平日の昼は父と王宮魔術師団に通っている。
夕食の時間は一緒に過ごせる。私は夕食の席ではワンピースを着るようになった。
◇◇◇
「マリー・ピアフが来た?」
「はい。門番がお引き取りを願ったのですが、中に入れろとしつこく、帰ろうとしません。令嬢を迎えに来るようにと文を持たせて従僕をピアフ男爵邸に向かわせました」
想定はしていたが、執事のセバスチャンからの報告に休日の午後のお茶が不味くなる。
ラフさんが滞在しているので、公爵邸の警備はいつも以上に厳重に、予約がない者は貴族であろうと決して入れるなと門番に命じてある。普通は事前連絡もなく訪れる貴族などいないが。
ラフさんの訪問は非公式だが、お忍びという訳ではない。
事前に父から王に知らせ、公爵邸に到着した翌日には、ラフさんは王宮で王家の方々と会食している。
正装のラフさん、すごくかっこ良かった。背が高くてスタイルがいいから映える。着慣れている感じがやはり王族って感じで、冒険者の時とは別人のようだった。スチル欲しい。
王宮魔術師団でも隣国王弟の身分は明かしてあるが、あくまで研究目的の私的訪問として、ラフさんの意向で社交は全て断っている。
学院で第二王子がトリスタンにラフさんの話題を振ったことで、マリーはラフさんに興味を持ったらしい。
(第二王子、余計なことを…。マリーの大好物がイケメンだって気付いてないの?)
トリスタンはマリーから「ラファエル殿下に紹介してください。公爵邸に招いてください」と何度も頼まれ、断っても断っても諦める気配がないとげんなりしていた。
そのことは公爵邸の使用人達に周知し、マリーの警戒レベルを上げていた。マリーは以前から我が家の『要注意人物リスト』に入っている。私が父に追加するようお願いした。
彼女は最近『性悪マリー』と噂される有名人なので、他の貴族家でも要注意人物扱いされてそうだが。
マリーが第二王子にラフさんの紹介をねだっても、第二王子だって会食で一度会っただけだし、隣国王弟相手に無理を通す真似はしないだろう。
今日、ラフさんと父は風魔石四輪バギーの整備に行っている。
私の14歳の誕生日プレゼントにエノナイから風魔石四輪バギーを輸入して以来、お世話になっている工房だ。私のバギーは私を乗せるより工房で父と職人にいじられている時間の方が圧倒的に長い。
トリスタンはオリビアとお出かけ。仲良しで何より。
皆、帰宅は夕方の予定だ。オリビアしか友達がいない私は今ボッチ。
いや、オリビアは未来の義姉だから家族枠? ってことは私友達ゼロ?
…私にはココとスイちゃんがいる。スイちゃんには魔岩魚の貢ぎ物が必要だけど。
(私も工房に一緒に行けば良かったかなぁ。でもお父様と工房に行くと長いからな。話にもついていけないし)
ちなみに父は、スイちゃんがココをヒコミテに連れてきたことは知っているが、冒険者ラフさんのことは知らない。私とラフさんはゲラン競技会で親しくなったと思っている。私達が愛称で呼び合うことがかなり引っかかっているようだ。
「殿下がお帰りになる前にマリーを回収してほしいわ」
「もしピアフ男爵邸の者が引き取りに来ない場合は、衛兵を呼びましょう。男爵令嬢の偽物かもしれません。貴族の常識を知らぬようですし」
おう…さすがセバスチャン。
王宮魔術師団の敷地は関係者以外立ち入り禁止なので、マリーがラフさんに接近するのは難しそうだ。
現状、ラフさんを独り占めしているのは父である。私、一度もラフさんとふたりになってない。そもそもラフさんは王弟モード時はガスパーさんとギーさんを従えているのでふたりきりはありえないけど。
この週末は父がラフさんを連れ回しているから、次の週末は私がラフさんと過ごしたい。人間の友達がいないからではない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます