第16話 カタカタとモフモフ

(ん? なんか庭に…)

 何だあれ! ハシビロコウ⁉



 かれこれニ時間、ハシビロコウに似た水色の鳥は全く動かない。

(目開けて立ったまま寝てる? 生きてる?)


 魔獣図鑑を広げ、該当するものがあるか調べる。


『水魔ハシビロコウ』属性:水 生態:不明


(…これだろうけど。ちょっと結界張って近づいてみるか)


「カタカタカタカタカタカタ」

「うわっ!」

 怖っ。めっちゃ嘴鳴らしてる。


 身長はトリスタンと同じくらいか? どこから飛んできたんだこれ。


 気になったが、もうすぐ夕食の時間だったのでその日は王都の公爵邸に帰った。



 ◇◇◇


(まだいる)

 その鳥は、翌日の午後も前日と同じ場所に同じ姿勢でいた。

 餌どうしてるのかな。水は自分で出せそうだけど。



 ◇◇◇


 うちの庭が気に入ったのか、この一週間私がヒコミテに来る度に鳥は同じ場所にいる。午後しか見ていないが、一日中ここにいるのだろうか。


 今日は鳥の定位置の近くに土魔法で小さな池を作り、アイテムボックスから水を出して、買ってきた生きた川魚を放してみた。

「無視か…」

 見向きもしない。


 ところが翌日、鳥は同じ場所にいたが、池の魚はいなくなっていた。

「食べたのかな?」

 嬉しくなって、魚を補充する。

 今度イーサンに川釣りを教えてもらって、自分で餌用の魚を釣ろう。



 ◇◇◇


「ぎゃ⁉」

 池に魚を放そうとしたところ、でかい魚が池でビチビチ跳ねていた。

 何だこの魚…1m近くある。鳥の仕業だな。


 そんなことが数回続いた。すっかりこの池は鳥の生き餌入れになったようだ。


「あんまり変なのは捕ってこないでよ」

 話しかけると、鳥が首を縦に振った。

「動いた…!」


 感動である。

 名前を付けよう。雄か雌かわからないけど…水色だからスイちゃんにしよう。

 番犬ならぬ番ハシビロコウだ。不審者がいても動きそうにないが。



 ◇◇◇


 バシャ!バシャバシャバシャバシャ!


 庭から水音が聞こえる。

(スイちゃんが大物を捕ってきたのかな。見てみるか)


「ええっ!」

 猫じゃん! なに池に放り込んでんだ!

 急いで救い出し、時空魔法で水気を取って抱いて温める。


 …猫じゃないな。虎の赤ちゃん?


 幸い赤ちゃんは元気で、しばらくもぞもぞ動いた後、私の腕の中で寝てしまった。

(足が太い…肉球プニプニ薄ピンク…)


 温かくて柔らかい赤ちゃんを抱いたまま、魔獣図鑑で虎型の魔獣を探す。


『火魔虎』属性:火 生態:不明


 …この図鑑、絵がカラーで綺麗だったから買ったけど、説明が雑。それともほんとに生態が解明されてないのかな。


 絵の魔獣は、足の先以外は動物の虎と同じ見た目だった。違うのは、赤い靴下を履いたように全ての足の先が赤いところだ。

 これ狩りの時目立つんじゃない? いいのかそれで。


 この子の足の先は白い。普通の虎だな。


 スイちゃん一体どこからこの子を連れてきたんだ。

 ある程度大きくなるまでここで育てよう。午後だけじゃなく朝食前と夕食後も通おう。まずは、寝てる間にミルクと哺乳瓶を買ってこないと。 

 

 名前は…虎の女の子だから、虎虎ココちゃんにしよう。

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