第13話 家族会議
第1回家族会議 場所:王都公爵邸居間
1 祖母が第二王子と私を婚約させようとしていること。
2 私は絶対に第二王子と婚約したくないこと。
3 できれば学院に入学したくないこと。
父「順当に行けば、婚約者はドゥモン侯爵令嬢だろう。殿下と同年代の令嬢で唯一の二属性持ちだ。歳は殿下の一つ上で、魔力量は少ないらしいが」
兄「アデル、以前は殿下に会いたいっていつも言ってたのに、本当に婚約者にならなくていいの? お茶会ではドゥモン侯爵令嬢も他の令嬢達も積極的に殿下に話しかけてたのに、アデルは全然話してないよね」
私「ドゥモン侯爵令嬢ってどんな人?」
兄「うーん、普通の人」
父「現時点で当家に打診はない。アデルが望まないなら、ドゥモン侯爵令嬢を押し退けてまで王家に嫁ぐ必要はない。いっそ、どこにも嫁に行かなくていい」
ん?
父「アデルの気持ちが変わらなければ、母上が王都に来る前に陛下に話をしよう」
兄「僕からも殿下に失礼にならない感じに言っておくよ」
私「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
二人に相談して良かった! こんなにうまくいく感じなら記憶戻ってすぐ相談すれば良かったよ。
ドゥモン侯爵令嬢に悪役を押し付けるようで申し訳ないけども。
父「しかし、学院は貴族の子女として行くべきだ」
私「…病弱だから領地で静養ってことにするわけには? それがダメなら留学とか」
父「…そんなに嫌か。学院入学はまだ先だ。今決めずともよいだろう」
◇◇◇
それから、私は冬と春を王都で過ごした。
一度、ドゥモン侯爵令嬢からお茶会の招待状が届いた。
喋ったこともないのになんでだ。参加しても疲れるだけなのは確実なので欠席した。
これまで誕生日には父からアクセサリーやドレスが贈られていたのだが、私がそれらを身に付けなくなったので、13歳の誕生日プレゼントには何が欲しいか父に聞かれた。
私はテグペリ領ヤカの公爵家別邸への旅をおねだりした。別邸にはかけ流しの温泉がある。転移先として押さえておきたい。
トリスタンも翌月の自分の15歳の誕生日プレゼントにその旅をリクエストして、二人で温泉旅行に行くことになった。主人公レベルのイベントだ。
風魔馬に乗ってみたり、馬車の乗り降りの際のトリスタンに悶えたりと、道中も楽しんだ。
別邸のお風呂は内湯も露天も広くて温度もちょうど良く、心ゆくまで堪能した。若いお肌がさらにスベスベになった気がする。
湯上がりほかほかトリスタンも可愛かった。和の趣があればもっと良かったんだが。次回は浴衣を用意して親子三人で来たい。
帰りは領都サンジュでイーサンを拾った。
イーサンは来月学院に入学し、在学中は王都の公爵邸で暮らすことになっている。久しぶりに見たイーサンは背が伸びていた。
一か月半後には祖母が王都にやってくる。
◇◇◇
第2回家族会議
父「陛下に、私の可愛いアデルは嫁にやらないと言っておいた」
私「ありがとうございます!」
イーサン「伯父上親バカっぽいな」
兄「殿下に聞いたら、まだ具体的な話はないって言ってたけど」
父「遅くとも殿下が学院に入学する前には決めるらしい。まだ本決まりではないが、陛下としても最有力はドゥモン侯爵令嬢とお考えだ。アデルも候補の一人ではあったようだ。一番可愛いから当然だが」
イーサン「……」
兄「おばあ様が納得するかな」
父「母上がアデルをねじ込もうとしても聞かなくていいと言ってある。陛下から王妃様や王太后様にも前もってそのようにお伝えいただくことになっている」
私「ありがとうございます!」
やった! 陛下よろしくお願いします!
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