深き虜囚
第50話 骸骨の帰還
「終わったか………」
骸骨の戦士アルダシール。よろめきながら、生き残った兵士が集う魔王城へ足を踏み入れた。
転生勇者との戦闘。力を使い果たして、暫し平野に眠っていたが、まだ調子は戻ってこない。
満身創痍の体を引きずって歩く他の兵卒と同じように、アルダシールは魔王城の門に吸い込まれていく。
「………あれは………」
魔王城一階。重厚な石像が立ち並ぶ薄暗い広間に、見覚えのある一団が集結していた。
「マルテル」
「しょ………将軍………!!!」
骸骨馬を駆る魔王軍の遊撃部隊。骸骨騎馬軍の面々が、神妙な面持ちで集合していた。
アルダシールが隊から分離し、勇者との一騎討ちに臨んだ後、彼の行方はわからなくなっていた。
勝って生き残ったのか、負けて死んだのかもわからないまま拠点に戻った彼らは、将軍の不在、それが意味するものに、押し潰されそうになっていた。
しかし、アルダシールは帰って来た。
自らの将の帰還を目の当たりにした彼らの間に、安堵したような雰囲気が広がる。
「よくぞご無事で……我々一同……貴方の帰還を心よりお待ちしておりました………!」
「ああ、俺は無事だ。この隊に被害は?」
「出ておりません」
「そうか…俺の代理としてよくやってくれた、感謝する。マルテル。そしてお前たち、よくぞ生き残った」
アルダシールは眼前に整列する、騎馬軍を見た。
安堵。全ての隊員は、緊張を解いたようだった。活気を取り戻したような雰囲気。
しかし、そんな雰囲気の中に、悲哀が混じったような、妙な雰囲気をアルダシールは感じ取った。
アルダシールは、不気味な懸念が胸を過っていくのを感じた。
「アルダシール将軍……。私たちは…貴方まで失ってしまったかと思うと…気が気では無かったのですよ………」
ある一言。隊の中に満ちる悲哀。アルダシールは、自らの懸念が現実に表出したことを悟った。
「まで…だと…?何があったッッ!!誰に何があったッッ!!」
アルダシールは、声を荒げた。目の前の者たちが、悪いのではない。だが、憤怒が沸き上がる。勇者が、また誰か殺したのか。
「将軍……!気をお鎮めください!!」
マルテルに諫められ、アルダシールは沸き上がる熱をふっと冷ました。
「あ……ああ……。悪かった。だが…何があったのだ…?俺以外の誰かがまた………」
マルテルは視線を落とした。喉元に棘が刺さったような表情。言いたくないことを、言わなければならない。この事は伝えられない。
マルテルは、アルダシールを見た。
土まみれになり、ぼろぼろだった。勇者との戦闘。この方は、勝利して帰って来たのだ。ならば、真実を伝えなければならない。
マルテルは決心し、言葉を放った。
「ムント将軍…戦死…」
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