第29話 伏撫
「ァ…ッッ…」
声にもならない叫びが漏れる。
投げ飛ばされたギルバートは、空中で友の最期を見た。荒れ狂う炎の塊が、大口を開けた蛇のように襲いかかって。
「クルグーーーーッッ!!」
灼熱に呑み込まれる。
それと同時に凄まじい爆風が発生して、辺りの木々を薙ぎ倒し、焼き尽くしていく。
肺を焦がすような熱風に包まれながら、ギルバートは地面に叩きつけられた。
「ぐはッ…!!」
「はははは!ゴブリンの丸焼き一丁完成ィ!でもこれじゃあお客様には提供できないなァ…だってほとんど灰だからァ!これ!はははははは…」
クルグを焼き殺した男。執拗な追っ手。奇術師のような格好をした、不詳の人物。口元までを覆うのは色褪せた金の仮面。黒い外套が、仮面の色を引き立てている。
「さて…君だ…。僕は君に話があるんだ」
仮面の男が片手で糸を引くような動作をする。
「面と向かって…お話しようよ…」
「……ッッ!」
ギルバートの足首に張り付いた黒い指に、力が込められる。そして、仮面の男の方へと体が手繰り寄せられる。
「君で、あの鉱山を知ってしまった可哀想なゴブリンは最後になるわけだね?」
黒い指に引き摺られ、ギルバートは仮面の男の前に投げ出された。男はギルバートの頭を掴んで持ち上げた。
「お前らみたいなゴミにチョロチョロされて困るのは俺らなんだよ?」
先程までのふざけたような態度を急変させた。歪められていた口元が、仮面と一体化したように無表情なものとなる。
男は蛇のように首をくねらせて、ギルバートを下から覗きこんだ。
「あの山をお前らが暴いたばかりに」
男の指が、更に強くギルバートの頭に食い込む。ギルバートは、呪縛から逃れようと、必死にもがいたが、無駄だった。
「俺たちがこうやって後始末をすることになる」
男は突如、ギルバートの顔面に膝を叩き込んだ。
「はがッ…!?」
鼻血を流して悶絶するギルバートに構わず、そのまま彼を地面に叩きつけて踏みにじる。
「お前らがあの鉱石…『
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