第20話 応戦
「シャアアッ!!!」
鎌のような形になった白い腕が、
風を薙ぎ、鋭い刃を輝かせて喰らいかかる白い凶器。首を刈るという殺気が、空気の揺れに乗ってギルバートに伝わる。
「速いッ…!」
刃が首に接触するすんでのところで、ギルバートはそれを回避した。身体を葦のようにしならせて後方へ退ったが、勇者の刃はギルバートの兜を弾き飛ばした。
「チィッ…!」
撥ね飛ばされた兜の中から、ギルバートの素顔が露になる。
緑の体色に、鷹の嘴のような鋭い鼻。魔族であることを象徴するような厳しい目付き。赤い眼球。
「くそッ…!」
ギルバートは体制を立て直し、勇者から距離を取る。
「野郎ォ…一瞬で間合いを詰めて俺の兜を弾き飛ばしやがった…。なんてスピードだ…」
ギルバートは拳を握り、構え直す。気を抜いていると、次に撥ね飛ばされるのは首だ。
「オトナシクシテロ…」
一撃を外した勇者は、ギルバートを睨む。ギルバートを視界に捉えながら、身体をゆらりと傾けた。
来る。そう思った次の瞬間、ギルバートと勇者の間合いは、一挙に詰められていた。ギルバートが見たものは、振り上げられた凶器。一息吐く間もなく、命を刈り取られる距離に入られた。
「野郎ォッッ!!!」
「死ネ…!」
ギルバートの首巻きが揺らめいた。振り下ろされる鎌に、己の拳で挑む。アッパー気味に突き上げた拳は、間もなく純白の刃と激突し、火花を散らして弾かれた。
勇者の鎌も、拳に当てられた衝撃で狙いを外して地面に突き刺さった。
「痛ェッ…!『硬化』を使っててもこれかよ…!」
刃を拳で受けたギルバートも、相応のダメージを負った。拳に、深い痣が刻まれている。
「蝿ガ…」
地面に突き刺さった刃を抜き、勇者はギルバートに向き直った。
「鬱陶シイゾ…」
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