第12話 切り裂いた『味』
「ゥバァッ…」
「ぎィああ…!」
「ゲぶッッ…」
「あっ…!!」
魔族も人間も、等しく戦場の塵と消える。転生勇者が戦場に降り立ったとき、何もかもが砂に消えた。生命も、勝負も、道理も、秩序さえも。混ざりあって、血飛沫を上げた。
「ふゥゥゥゥふふふふふふふふ!!!ひィえェーーーッッははは!!!この匂い!この色!この味!この雰囲気!これだァ!僕が求めていたのはまさに!!
捻れた至福を象徴する歪な口角と、限界までひん剥かれた白目。紫の勇者は、生き物の殺害に快楽を覚える。
手に携えたたった一本の
「ああッ…!はァッ…!はァッ…!イイ…。凄くイイ感触だ…!!カワイイよ…!!怯える肉も、震える内臓も…。ぜんぶ…ぜェんぶッ僕のモノだァ!!――――――――」
――――背徳は、最高のスパイスだ。転生前夜、彼は刑吏にそう語った。戒められていること。
薄汚れた椅子に腰掛け、何かを求めるように忙しなく眼球を動かしていた男はそう言うと、不気味に笑ってこの世を去った。
首を吊られた男。その死体は、笑っていた。まるで何かを期待するように笑っていた。不敵に。希望に満ちて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます