第4話 魔族の矜持
「ぐ…はッッ…!!」
「僕にッ!!一瞬でもッ!!恥をかかせたことッ!!思い知れッ!!ゴミクズがッ!!舐めろッ!!土をッ!!噛めッ!!泥をッ!!味わえッ!!敗北の味をォッッ!!!」
何度も何度も、勇者は骸骨の頭を踏みつける。どす黒い憎悪と、深い闇を心に抱いて。今までの鬱憤を晴らすように、踏みしめ続けた。
「がァァァァああああああ!!!」
獣のような咆哮を上げ、足を一段と大きく上げたその時、勇者は欲望の発散が、何者かによって妨げられたのを感じた。
地に這いつくばる骸骨が、勇者の足を掴んでいた。その光景を見て、勇者は更に昂った。
「放せェッッ!!クズッッ!!死ねッッ!!死ねェーーーーッッ!!!」
暴走する勇者を尻目に、骸骨は勇者の足を払いのけ、立ち上がった。剣も鎧も消え去ったが、闘志だけは奪われていなかった。ほとんど丸裸の状態で、勇者を睨み付ける。
「……満足か」
「満足かだとォーーーッッ!?何だその眼はその態度はァッッ!?僕を舐めているのかッッ!?汚れた血を流す卑しい下等種族がッッ!!神である僕に楯突くうざったい糞虫がッッ!!お前をバラバラにするまでッッ!!何者も僕の怒りを鎮めることなど出来ないんだッッ!!」
勇者は衝動的に、目の前の骸骨に殴りかかった。憎悪で固めた高速の拳が、骸骨の顎を捉えようとしたその時だった。
「転生者がッ!!貴様こそ魔族を舐めるなよッッ!!俺たちは倫理観や道徳心の欠如によって『魔族』と呼ばれているのではないッッ!!魔族の父とッ!魔族の母の下に産まれたから魔族なのだッッ!!貴様のように矜持も仁義も持ち合わせない薄弱な男には解らぬ道理だろうがッッ!!俺達には『魔族』として生まれた誇りがあるッッ!!人間だってそうだッッ!!己の種族が高潔であることにッ誇りを持っているッ!!神を騙り悪魔を貶める貴様ごときにッッ!!『生き物』としての誇りが解ってたまるかッッッッ!!!」
アルダシールの躯から立ち昇る漆黒の覇気はやがて天を覆い、暗雲と雷鳴を呼んだ。ただならぬ魔の気配が、転生勇者の憤怒を恐怖心で塗り固めた。
「あ…ああ…!!何が…いったい何が起こるんだ…!?僕は…」
『魔族』を畏れているのか?
無意識に、自問した。認めたくない事実。現実というものを。都合の良い出来事ばかりを経験してきた転生者は、初めて突きつけられた不条理を認めることをしたくなかった。だが、彼の意志に関わらず、不都合は現実に顕現する。
「俺の鎧を取ったこと…!そしてこの俺の前で魔族を愚弄したこと…!!存分に後悔するが良い…!!」
やがて、天から黒い
アルダシールに代わって遊軍を指揮していたマルテルは、遠く暗雲から、漆黒の雷が落ちるのを見た。マルテルも、アルダシールの騎馬兵たちも、その光景を見て、アルダシールの『骸骨の王』たる所以。魔族としての絶大な力を思い出した。
戦場から遠く、魔王城。その玉座に鎮座する魔王も、黒い雷鳴を見て密かな笑みを浮かべた。
「『
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