第1514話 シャンプー

彼女が使っていたシャンプーの匂いが、今でも心に残っている。高校時代の初恋の彼女が、毎日のように使っていたその香りは、今でも公共の場で嗅ぐと、当時の幸せな気持ちがよみがえる。あの頃は純粋で、相手のことを思いやるが強かった。でも、一度気持ちは別れた彼女と今も連絡を取り合っているわけではない。 彼女に会ってみたいと思うことがある。その頃は何もかもが新鮮で、お互いに恋をしていることが分かっていても、それが当たり前ではなかった。彼女にはもうすでに新しい恋人がいるかもしれないが、自分にとって彼女が初めての恋人である変わりことはない。気持ちを抱いたまま、今も時折り、シャンプーの香りがする人が見えると、ついつい振り返ってしまう自分がいる。

ふいにまたあの香りがする。

僕は反射的に振り返る。そこには、間違いなく当時の面影がある彼女がいた。

「久しぶりだね。元気?」

そう言ってくれる彼女に、僕は見惚れていた。

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