前のエピソード――第1504話　愛を知らない少女

今日は虹砂が降るらしい。外国から風に乗って流れてくるのだそうだ。虹砂を吸い込むと、幸運が訪れるらしい。だから皆、外に出て思いっきり胸いっぱいに空気を吸い込んでいた。普段はひきこもっている人も外に出て、虹砂を吸い込みまくった。おかげで明るくなり、ひきこもらなくなった。虹砂には、幸せホルモンであるセロトニンが含まれているらしい。不思議な砂もあるものだ。

「ねえ。虹砂って体に害はないの？　だって砂なんでしょ？　吸い込んだら危険なんじゃない？」

「ははっ。大丈夫だよ。虹砂は砂に似ているってだけで、実際は天使が撒いた粉なんだ。害はないよ」

この世に天使なんているのか。初めて知った。天使の存在が確認されたのは、虹砂を採取して分析した研究者達が発見したからだ。遠い外国の土地で天使が飛んでいるのが目撃された。

「幸せになりすぎて、私困っちゃう」

そう言ってテンションがハイになった人が続出した。