第1504話 愛を知らない少女

愛をください。少女は誰からも愛されなかった。だから愛を欲した。ただ、それだけの事だったのだ。

「私はただ……愛されたかっただけなんです」

そう言って彼女は泣いた。僕も彼女と同じように泣き続けた。何でだろう? 彼女の気持ちが痛いほど分かった気がする。僕の両親は優しかったけど、それだけだ。愛情なんか注いではくれなかった。でも、僕は両親が嫌いじゃない。それは何故だろうか? 分からない。ただ言えるのは、彼女にはもう何も残っていないという事だけだった。

そして、僕には彼女が必要になっていた。この世界で唯一、僕を理解してくれる人。それが彼女だったから。僕は彼女を抱きしめて、それから二人でずっと泣いていた。

泣き疲れた頃、僕はやっと口を開く事が出来た。

「僕じゃ駄目かな?」

彼女は驚いたように顔を上げた。

「君を愛する事は出来ないかもしれないけれど、僕なら君の事を分かってあげられると思うんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る