第1464話 会話で大根

給料日まで金がない。こういう時は貧乏飯の強い味方、カイワレ大根を買うしかない。スーパーに行って野菜のコーナーを見ていると見つけたのは、カイワレ大根の隣にあった、会話で大根という見た事のない大根だった。しかも十円という安さだった。カイワレ大根の新種かと思い、今の俺の懐具合から考えると、こっちの方がお買い得に思えた。だから会話で大根を購入した。早速家に持ち帰り、パックを開ける。

「ぷはぁ!!息が詰まるぜ。助かった。ありがとよ」

会話で大根が話しかけてきた。

「えっ……ええ!?」

「俺を美味しく食べてくれるのか?」

「まあそうだな。俺の胃袋に入ってもらいたい。しかし意思がある大根は、調理しにくいな」

「俺は美味しく食べられるために生まれて来たんだから、遠慮なく美味しく食べてくれよ」

包丁で小さく切り、沸騰した鍋の中に入れる。

「また来世で会おうぜ」

「……く、食いにくいな」

俺は、命に感謝した。

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