第1460話 春色眼鏡

春色眼鏡は、春の色を反射する眼鏡だ。春といえば何を思い浮かべるだろう?

大体の人は桜だったり、花粉症だったりといったものを思い浮かべるだろう。春色眼鏡は、そんな春らしいものを反射する。だから卒業式や入学式といった、出会いと別れすらも反射してしまう。

「それ変な眼鏡だな」

「これがあれば人との出会いも別れもない。変わらない日常を送ることができるんだ」

「でもそれってつまらなくね?」

「俺は変化を好まないからな」

そんな会話を友達とした。春色眼鏡をかけているから、卒業もしないし、入学もしない。

「ちょっと待てよ。ってことは、お前。留年じゃん」

「それは困る」

「じゃあその春色眼鏡とかいうヘンテコな眼鏡外せよ」

俺は留年だけは避ける為、春色眼鏡を外した。すると今まで溜まっていた”春”が一気に押し寄せて来た。

俺は卒業するときの寂しさで泣き、入学するときの興奮でワクワクし、花粉症で悩まされた。

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