第1455話 桃色ワンピース

君にプレゼントしたくて、僕は一生懸命働いて君の為にプレゼントを用意した。

「これ受け取って欲しい」

「なあに?」

それは桃色ワンピース。君のような可愛らしい女性に、よく似合うと思った。

「わあ。凄く綺麗。ありがとう。また今度、着てくるわ」

その会話が君との最後の会話だった。君の事は忘れて新しい恋をした。その人と結婚して幸せに暮らした。あれから半世紀が経った。ある日、家に誰かが訪ねてきた。

「こんにちは。あなたは、もう覚えてないわよね。もう五十年も前だから」

そう言って、老婆は大事そうに鞄の中に入れていた桃色ワンピースを取り出した。

「まさか……」

「久しぶりね。会えてうれしいわ。ごめんなさいね。約束守れなくて」

仕方ないさ。戦争が始まったのだから。

「お互い歳を取ったね」

「ふふ。このワンピース。私の人生で一番の思い出なの」

素敵な恋だった。当時の事を鮮明に思い出す。あの頃の桃色の日々を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る