第1425話 春が来た

春の匂いがした。小学生はランドセルを背負い、希望を持って登校している。

「……ふっ」

俺は鼻で笑った。

そんなもん俺には無縁だな。学校に行くのが億劫になる。今日も一日頑張ろうって気力が湧かない。

「……ん?」

校門をくぐると、生徒たちがざわついていた。何やら女子生徒が集まっているようだ。

「何かあったのかしら?」

美春は不思議そうに首を傾げている。

「さあ……」

俺たちは人集りに向かっていく。

すると――、

「きゃー! 朔良ちゃん!」

「おはようございます!」

「サインください!」

「握手してください!」

「写真撮らせてください!」

「うわぁ……」

俺は思わず顔をしかめた。

女子生徒が群がっている中心にいたのは、金髪碧眼の美少女だった。彼女は困ったような表情を浮かべていた。

「お前らやめろよ。困ってるだろ」

「ありがとう」

それ以来、なぜか彼女に懐かれてしまった。俺にも春が来たようだ。

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