第1418話 みや

仕事をクビになった。上司のミスを押し付けられた。卑怯な立ち回りだけは上手な、ズル賢い上司にしてやられた。

「クソッ……」

入社して五年。真面目に一生懸命働いてきたつもりだ。悔しい。大雨の中、ズブ濡れになりながらアパートの部屋へと帰っていた。

「みゃあ……」

猫の声が聞こえた。僕は声のした方に向かって歩いていくと、段ボールの中に入った子猫がいた。

「お前、捨てられたのか。そっか。可哀想にな。俺も会社に捨てられたんだ。まあお前に言っても分からないだろうけどな」

気づけば僕は子猫をアパートに連れて帰っていた。

「名前をつけてやる。みゃあって鳴くから、お前はみやだ」

里親を探した。ネットの掲示板に募集を書くとすぐに見つかった。そしてみやを引き渡した。飼い主は小さな工場を経営している社長さんだった。僕はその縁で工場で働くことになった。みや、お前も俺を心配してくれたんだな。ありがとう。

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