第1417話 初雪が愛おしい

壊れてゆく想いをどこにぶつければ良いのだろう。私にとってこの恋は、今まで生きてきた中で一番本気になった恋だった。これ以上、誰かを好きになれる自信なんてない。本気の恋愛だった。

涙を流しながら寒い夜の道を歩いていく。過ごしてきた日々を思い出しながら、一歩ずつ歩いていた。

今年は雪が降らなかった。温暖気候が続いていた。でも今日の寒波は、雪が降ってもおかしくない気候だ。ハァと手に向かって息を吹きかける。

白いものが空から落ちてきた。

「……ほんとに降ってきた」

少し歩みを早める。早く家に帰ろう。

もう二度と彼と会う事はない。喧嘩の後に雪に振られるとは、本当に散々だ。悪いのは彼だ。喧嘩の原因は、些細なことだったけど私は悪くない。

家に着くと、彼が雪まみれで待っていた。

「遅いな……。おかげで雪だらけだ」

「何よ」

「そういや俺達が出会ったのも、こんな初雪の日だったな。……ごめんな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る