第1367話 初恋別館

初めての彼との旅行、旅館に着いて受付に行く。

「お客様は初恋ですか?」

「は?はい。まあそうですけど」

別にいいじゃないか。そんなこと聞かなくても。

「当旅館では、初恋の方には専用の別館をご用意しております。ご案内致します」

そう言われて案内された別館は、海の見えるとても綺麗なところだった。

「うわー!!凄くきれい」

「初恋は人生で一度しかございません。ですからお客様の初恋の思い出を最上級のおもてなしをすることが、当旅館の使命だと感じております」

「ありがとうございます」

私は感激した。しかし疑問が浮かんだ。

「どうしてわざわざ初恋別館なんて専用の別館を作ったんですか?赤字になるでしょう?」

「ええ。創立者の山村の初恋は、それはそれはもう散々なものだったと聞きます。そして長年、山村は初恋の思い出で苦しんできました。ですからお客様には、そのような思いをして欲しくないという心意気なのです」

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