Akiyu短編集～千物語～

第1366話 主題歌アダプター

画期的な電化製品が発売された。それはもはや電化製品ではない。なぜならば人の脳を電源とし、動くのだ。もうこれは、脳化製品と言ってもいいだろう。その第一弾として発表されたのが、主題歌アダプターだ。耳にイヤホンのように器具を装着すると脳波を読み取り、その人の頭の中で流れているメロディーが実際の音としてスピーカーに出力されるというものだ。

私は彼と部屋の中で過ごしていた。そこで面白そうだと思い、彼に主題歌アダプターをつけて話してみることにした。

「でさ、うちのポチがね。餌が出てきたから喜んでくるくるその場で回っちゃってさ」

「それは可愛いね」

その瞬間、部屋の中に子犬のマーチが流れてきた。なるほど。彼の脳内は子犬のマーチが流れているのか。

「でね、リカの友達が浮気されちゃってさ。その浮気相手の男、逆切れしてさ」

その瞬間、レクイエム　怒りの日が流れ出した。彼の頭の中では、壮大な曲が流れている。