第1287話 眠気吸い取りチョーク

俺はスーパーティーチャー伊藤。STIだ。そう、俺は熱血教師が主人公のドラマに憧れて教師になった。今日も熱血指導をして生徒達と深い絆で結ばれて青春を謳歌する……つもりだったが、それはドラマの中の話で、現実は違った。生徒は妙に大人びていて、冷めている。近頃の子はこんなものなのか。そして授業。授業中は皆、俺の声を子守唄にして眠ってやがる。教師の自信なくしちゃったぜ。そんな事を思いながら歩いていると、国語の担当で生徒からの信頼も抜群で、しかも美人な先輩先生が、悩んでいる俺に眠気吸い取りチョークなるものをプレゼントしてくれた。それを使って授業をしてみると、生徒は一切眠らず、俺の話を聞いてくれるようになった。これで俺も先輩のように、キラキラ輝いた先生になれる。ドラマのような。

しかしそう思ったのは、それだけだった。授業を真面目に聞いてくれるだけで、俺は生徒から懐かれる事は一切なかった。

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