第972話 トキブリ

「君はゴキブリが生きた化石だという説を知っているかい?」

そう言われた私は、首を横に振った。

「3億年前。人類が火を使い始めた頃からゴキブリは現れ始めた」

「あのう、博士。私は博士のタイムマシーン理論について教えてもらいたくて今日は来たんですけど……。ゴキブリの話じゃなくて……」

「私は思ったよ。原型をほぼ変えず3億年同じ姿で生きているゴキブリの中には、時空を超える能力を持った個体がいるのではないかとね」

「時空を超えるゴキブリ……」

「それを私は時を超えるゴキブリ。トキブリと呼んだ」

「トキブリ……」

「初めは眉唾ものだったけどね。研究を重ねていくと、トキブリは本当にいた事が分かったんだ」

「まさか!?」

「トキブリの遺伝子構造を解析していくうちにね。完成したんだよ。タイムマシーンが」

皆が欲しがる時空を超える装置。それが皆の嫌われ者がヒントになり作られるなんて、皮肉な物だと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る