第967話 影

僕にいつもついてくる。君はどうして僕にずっとついてくるの?

振り払っても振り払っても、どれだけ速く走っても君はぴったりくっついてくる。

僕の形をした僕じゃないもの。

それが君だ。


君は全身真っ黒で、太陽の光が出ている時じゃないと現れない。どうして君は、僕なの?どうして君は、僕の真似をするの?


そう。それは君が僕の影だからだ。

僕にとって君は、いなくちゃいけない存在なんだ。


影がなければどうなるか知ってるかい?


人や動物は物体に反射した光を見ている。だから、そうなれば誰の目にも僕は見えなくなるだろう。

影がなくなれば、全てのものが見えない、暗黒の世界が生まれるのだ。


そうなんだね。君は僕を他の人に見せる為に僕にくっついているんだね。


ならば君は光だ。僕にとっての光だ。

僕は君の事を誤解していた。真似ばかりする鬱陶しい存在だと思っていたけど、そうじゃないんだね。


ありがとう。影。

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