第958話 花火を描いた

花火を描いた。花火を見れないから。

病室から聞こえるのは、花火大会に行った楽しそうな人たちの声だけ。だから私は、その人たちの楽しそうな声だけを頼りに花火の絵を描く。


私の描いた絵を看護師さんが褒めてくれた。とても綺麗な花火だと。


「ねえ。私の知り合いに絵のギャラリーをやってる人がいるんだけど、この絵を飾らせてもらえないかな?」


そう言って私の花火の絵は、ギャラリーに展示される事になった。


ギャラリーには多くの人が来てくれたらしい。そして一番人気だった絵が私の描いた花火だったという。入院している少女が描いた花火の絵。彼女は本物の花火を見た事がないらしい。そんな話を聞き、ひとつのクラウドファンディングが立ち上がった。


<入院している女の子に花火を見せたい>


お金が集まり、病室から見える場所で花火大会が開催される事になった。

私は生まれて初めて見る花火に感動し、人の温かさを知った。

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