第939話 パラグライダー

空を飛ぶのが夢だった。大空を鳥のように羽ばたいて、風を感じながら地上を見下ろす。そんな壮大な夢。夢を叶える為、私はパラグライダー体験コースを予約した。上空1000メートルの山からタンデム飛行できるというプランだ。

「学生さん?学割しとくよ」

「本当ですか!?ありがとうございます」

気軽で話しやすいおじさんは、ベテランパイロットだ。この人に命を預かってもらう。これなら安心だ。

「3,2,1,スタート!!」

走り幅跳びのような要領で助走をつけ、ゼロのタイミングで地面を勢いよく蹴り上げて空へと羽ばたく。私の体は、空を舞った。風を受ける感覚というのは、原付バイクで走った時に似ている。


「これが……飛ぶってこと!!」


ある程度まで降下したら、上昇気流に乗って再び浮上し、そのまま同じ場所に帰ってくる。


素敵な体験だった。人の一生は短い。だからこそ叶えられる夢は、叶えていきたいと思った。

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