第904話 梅雨来たる
梅雨は、和室の扉を開いた。
「来たか、梅雨よ」
「はい、お爺様」
緊迫した空気が部屋を漂う中、梅雨は部屋の中に入る。
「分かっているな。今年もお役目の時が来た」
「はい」
「今年も恵みの雨をもたらしてきなさい」
「はい」
私の名前は梅雨。梅雨の季節になると、雨を呼んでくるのがうちの家系の役目。その役目の事を梅雨というらしい。私は生まれ持って、”梅雨”としての特別な才能があったらしい。だから名前も梅雨と名付けられた。お爺様がつけてくれた名前だ。お爺様も歴代の梅雨の中でも、多くの功績を残した凄い梅雨だ。尊敬している。
「しかしな。梅雨よ。お前の梅雨は、ちと強力すぎる」
「お爺様。私、加減が分からないのです」
「ふむ……。力を持ちすぎるのも考えものだな」
未熟な私は、梅雨のコントロールができない。だから今年も多くの被害が出るかもしれない。まだ新人の梅雨だから許して欲しい。
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