第846話 鬼婚者

彼女は既婚者らしい。そう言われ、俺は残念だと思った。密かに彼女を狙っていたのに。

「それも鬼婚者なんだ」

「なんだそれ?」

「その名の通り、鬼と結婚した人の事さ」

「えっ?旦那さんは人間じゃないの?それならまだ俺にもチャンスはあるじゃないか」

「やめておけ。鬼相手だと何されるか分からないぞ。殺されるかもな。運が良くて半殺しだな」

「面白い。望むところだ。どんな鬼か見てやろうじゃないか」

俺は彼女に旦那さんを紹介して欲しいと頼み、旦那さんと会う事になった。

待ち合わせ場所である喫茶店に現れたのは、まさに鬼だった。日本の角が生えており、身長は2mを越えており、イカつい見た目をしている。彼女はよくこんなのと結婚したもんだ。

「彼のどういうところが好きなの?」

俺が彼女に訊ねると、彼女は恥ずかしそうに答えた。

「私を守ってくれる力強い所かな」

確かにどんなに強い者からも守ってくれそうだ。

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