第844話 ラバーペンシル錯視

鉛筆を波打つように上下に振る。鉛筆がゴムのようにしなり、グニャグニャと曲がって見える。この現象をラバーペンシル錯視と呼ぶ。


私は学者であり、悩んでいた。次の研究テーマを何にするかという事に。ラバーペンシル錯視で遊びながら、良いアイデアはないかと考えた。


「曲がって見える。……曲がる。そうか。曲がる鉛筆を作ってみればいい」


私は早速曲がる鉛筆の試作を試みた。曲がる鉛筆の素材は何が良いのか。どうやって曲げるのか。あれこれ考えた挙句、ようやく完成した曲がる鉛筆。

早速書いてみる。


ぐにゃ……。


「そうか。なるほど。筆圧について全く考えていなかった。力を加えると曲がってしまうなら、上手く書けないではないか」


これも失敗だ。私は画期的な物を作りたかった。しかしこれではダメだ。

何かこう違う物を曲げれるように。

そして私は、私自身を曲げた。その結果、私は筋を痛めてしばらく寝込んでしまった。

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