忘れた記憶を取り戻したい――。

誰もが一度は、そんな事を考えた事があるだろう。人は忘れる生き物だ。必要のない記憶は、頭の中から消えていく。それは本能であり、ごく自然な事なのだ。だから私は開発した。再生消しゴムを。この再生消しゴムを使えば、人は忘れた記憶を取り戻す事ができる。

「博士がそこまでして取り戻したい記憶って何ですか？」

「亡くなった母との何気ない日常の出来事だ。どうしてだろうね。今となっては、どうして頭の中に残ってないんだろうと嘆いてしまうのだよ。……私は冷たい人間なのだろうか」

「博士はいつも言ってるじゃないですか。脳は生きていく上で必要な記憶を残すようにできているって。日常の出来事なんて生きる上で重要じゃないと脳が判断したんですよ」

「私にとっては重要だよ。私を一番最初に愛してくれた人との思い出なんだから」

蘇った記憶の中で母に会えた私は、懐かしい気持ちに涙を流した。

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