第762話 月明かり

暗闇の深い夜に唯一ある月明りだけが、私の体を照らす。誰にも言ったことないが、私には夢や理想がない。それが一番の悩みなのだ。自分が何者でどこで何をしたいのか。なぜ生まれてきたのか。そんな哲学的な事をぼんやりと考えながら、月明かりを頼りに暗闇の深い夜に散歩するのが好きだ。風は穏やか。春らしい心地よい気候。暑くもなく寒くもない丁度良い季節。


嗚呼、孤独だ。

だが孤独こそ人生なのではないか。

人は皆、最後は一人で死んでいく。誰かと共に死ぬことはないのだから、孤独は悪くないのかもしれない。

答えはわからない。何が正しいのか。

私の進むべき道を月明かりが照らしてくれたらいいのに。

ここから逃げ出したい。この現実から。

誰かが言った言葉に惑わされるくらいなら、いっそのこと自分の直感を信じてみるのもいいかもしれない。

月明かりが照らすのは私。だから私はきっと大丈夫。そんなポジティブな直感で今日も生きる。

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