第761話 優しい嘘

「ごめん、別れよう」

「どうして……?」

「他に好きな人が出来たんだ」

「酷いっ!!酷いわっ!!うっ……ううっ……ぐすっ……」

「そういうことだから新しい恋をして幸せになってよ。それじゃあね」

僕は彼女に別れを切り出した。他に好きな人がいるからと言って。

でも本当は嘘なんだ。君以上に好きな人なんて絶対に現れない。


本当は――

僕の余命は、あと三ヶ月なんだ。

熱っぽくて病院に行った。詳しい検査をする必要があると言われ、検査すると医者から余命三ヶ月を言い渡された。突然の事に僕は、思わず笑ってしまった。

「先生、冗談きついな。僕、今まで大きな病気なんてした事ないけど」

「残念ですが事実です。今すぐ入院の手続きをして頂くようにお願いします」

「少しだけ時間を下さい」

彼女には幸せになってもらいたい。その為なら僕は、彼女に嘘をつくことだってできる。君に悲しい思いはさせない。悲しむのは僕一人でいい。

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