第714話 鯉に恋したおじいさん

公園に行くと、いつも池を眺めているおじいさんがいる。おじいさんは、毎日毎日池を眺めているのだ。僕は不思議に思い、おじいさんに声をかけた。


「おじいさん。どうして毎日毎日、池を眺めているんですか?」

「鯉が好きでな。恋してるんじゃよ。昔戦争があってな――」


おじいさんは自分の昔話を始めた。今では信じられないかもしれないが、この辺りも戦場になって大変だったらしい。この池は昔からあって鯉が泳いでいたらしい。そしておじいさんには、好きな人がいた。よくその女性と一緒に鯉を見に来て餌をあげていたらしい。そんな思い出があるんだと語ってくれた。


「そっか。おじいさんにとって、ここは思い出の場所なんですね」

「ああ。もう何十年も前の話じゃがな。ここに来ればまたあの子と会えるような気がするんじゃ」


その時だった。池が光り、池の中から女性が現れた。


「ああっ……」


おじいさんは、嬉し涙を流した。

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