第637話 福服

「これは大変縁起の良い服でございます。お嬢様にとてもよくお似合いです」


メイドに渡されたのは、新しい服だった。今日は城でパーティーがある。王子様のハートを射止めるのは私。そう意気込んでメイドに服を選ばせたのだけど、この服はそんなに好きな服ではない。


「ええ。これなの?もっと可愛いのないの?」

「この服には、秘密があるのです。福服という種類でございます」

「福服?」

「福が舞い降りる服なのです。職人の手作りで世界でもなかなかお目にかかれない代物でございます」


私は渋々、福服を着て城へ向かった。王子様が近づいてきた。


「その服、福服だね」

「ご存じなのですか?」

「ええ。よく手に入れましたね。とても珍しくて良い品物だ」

「私は違う服の方が好みだったんですけどね」

「実は私もだ。福服のデザインは、そこまで好きではない」

「正直ですわね」


王子様と話が合って意気投合した。

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