第636話 節分の由来

むかしむかし、腹を空かせた鬼がおりました。鬼は心優しく、人間の前に姿を現して怖がらせないようにひっそりと暮らしていました。ある日、鬼はどうしてもおなかが空いて、山を下りて人間の所へ降りてきました。


「お願いがあります。どうか食べ物を分けてください」

「鬼か。その代わり、人は襲うなよ」

「はい、もちろんです」


それから心優しい人間の男は、鬼に食べ物を分けてくれるようになりました。ある日、鬼は食べ物を貰いに行くと、人間の男が言いました。


「お前、厄を運ぶ鬼の役をしないか?」

「鬼の役?」

「お前に豆をぶつけたら厄を祓えるという噂を流す。腹が減ったら村へ降りて来てわざと豆をぶつけられろ。その豆を食えばお前は、いつでも好きな時に腹いっぱい食えるだろう」


こうして生まれたのが節分なのです。

鬼は厄を運ぶというのは、優しい男の嘘から始まった話だったのです。

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