第631話 鳴らないオルゴール

幼馴染と今日で離れ離れになる。父の仕事の転勤で、俺は遠くへ行く。


「今日でお別れだね」

「うん」

「これあげる」


それは彼女が大切にしていたオルゴールだった。


「10年後、ここでまた会えたら嬉しいな。その時まで私の事忘れないように持ってて欲しいの」

「わかった」


時々昔を懐かしんでオルゴールを鳴らそうとするが鳴らなかった。壊れているのだろうか。

10年が経ち、俺は17歳になった。彼女との約束の場所へ、俺は出向いていた。


「……いるわけないよな。もう10年も経ってるのに。何やってんだ、俺」


そこに一人の女の子が現れた。


「久しぶり。背伸びたね」


それは彼女だった。


「これ」

「わぁ!!懐かしい!!オルゴールまだ持っててくれたんだ!!」

「うん」

「そのオルゴール。鳴らないでしょ。鍵がいるんだ」


そう言って彼女は、鍵を差した。オルゴールは、10年ぶりにメロディーを奏でた。

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