第628話 ヒッチハイク

随分遠いわね。仕方ないわ。ヒッチハイクしようかしら。


あたしは行きたい場所がある。でも車も持ってないし、ヒッチハイクで乗せて行ってもらうしかない。あたしは目的地を書いた紙を掲げて道路で車にアピールした。しかし誰も止まってくれない。


「ちょっと!!止まりなさいよ!!こんなに可愛い女の子がヒッチハイクしてるんだから」


どの車も一瞬だけブレーキを踏む。しかし次の瞬間、全力でスピードを出して走っていく。


「もう!!止まりなさいよ!!なんでよ!!どうしてよ!!どうして止まりそうで止まらないの!!」


そして私は、その理由にようやく気が付いたのだった。


「ああ、そうか。そうよね」


私は幽霊。足がないのだ。だから私の姿を見た時、ドライバーはビビッて私を乗せようとしないのだ。


「何よ、もう。こんなに可愛い女の子なのに!!」


その時、一台の車が停まった。その運転手は青白い顔をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る