第620話 安らかなるチョーク
「そこ!!静かにしなさい!!」
授業中、私は勢いよくチョークを飛ばした。生徒が私の話を聞かず、喋っているからだ。飛ばしたチョークは生徒に当たり、粉々になった。
「先生っ……。うっ……ううっ……ぐすっ……もうっ……やめてください……。チョークが……チョークが可哀想です……」
一人の女の子が泣きだした。
「チョークが可哀想って……。何を言ってるんだ」
「チョークも生きてるんです。先生、チョークもきっと言ってますよ。何の為に生まれてきたんだろうって」
「チョークがそんな哲学的な事を考えるだろうか?」
「考えます!!ほら、耳を澄ませて。声を聞いて」
「僕らは投げられるために生まれた訳じゃない。僕らは使命を放棄する」
チョークは授業を放棄した。先生は黒板に文字を書く事ができなくなり、授業は中止になった。それ以来、先生はチョークを投げるのをやめた。しかしチョーク達は、二度と文字を書く事はなかった。
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