第621話 不思議な湧き水

私にはミネラルウォーターを買う人の心理が分からないし、水道水でいいと思っていた。そう。あの不思議な湧き水に出会うまでは。きっかけは、友人の優子から勧められたからだ。

「優子、最近肌綺麗だよね」

「おっ、分かる?」

「えー、何よ。秘密を教えなさいよ」

「神肌神社の湧き水のおかげなの」

「湧き水?」

「そう。水が良いと肌の張りも変わってくるのよ」

私は優子に連れられ、神肌神社の湧き水を試しに貰ってきて飲んでみた。すると確かに肌が綺麗になった気がする。

「凄いっ!!」

私は神肌神社に通うようになった。そして来る日も来る日も湧き水を持って帰った。

「ねぇ。お参りはしないの?貰ってばかりじゃなくてたまにはお賽銭投げないと罰が当たるわよ」

優子にそう言われた事をすっかり忘れ、湧き水を貰ってばかりの私は、肌荒れが酷くなってしまった。

「ほら。言わんこっちゃない」

私は初めて賽銭箱に500円玉を投げた。

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