第613話 時を止める出目金
この子の能力は突然現れた。私は家で飼っている出目金に餌をあげていた。出目金が餌をパクッと食べた瞬間、家の中の全ての時計が同時に止まった。そして私以外の全ての時間が止まっていたのだ。私はパニックになった。どうやったら元に戻るのかと。水槽を見ると出目金だけは、ゆらゆらと動いていた。
「お前がやったの……?」
私はもう一度、餌を与えてみた。すると時計は再び動き出した。私は毎日、時を止めて遊ぶようになった。遠出して観光に行ってみたりもした。そして帰ってきて出目金に餌をあげると、時間は再び動き出した。
その夜、出目金は死んでしまった。それと同時にもう時間を止めて遊ぶ事ができないのだと思うとショックだった。出目金を埋葬する時、ふいに声が聞こえた。
「時間は有限だ。悔いのない人生を送れ。私はお前に愛され、有意義だった」
私は予想よりも偉そうな出目金の声に、思わずくすりと笑ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます