第534話 役者魂

次の舞台の稽古の最中、座長が私に厳しい言葉を投げかける。


「違う!!そうじゃねぇよ!!もっとこう……感情を込めて台詞を言わなくちゃ!!役者魂見せてみろよ!!」


役者魂を見せてみろ……。

そう言われても、私は一生懸命やっているつもりだ。

あーあー、どこかに落ちてないかな。役者魂。


夜遅くまで続いた稽古が終わり、私は家へと帰っていた。すると奇妙なものを見つけた。


「あれ?あんなところにお墓あったかな?」


ひとつだけポツンとあるそのお墓。名前を見ると、鳳凰院京太郎と書いてあった。


「凄い名前」

「そりゃ俺の芸名だからな」

「だ、誰!?」

「どうも。鳳凰院京太郎です。お姉さん、見たところ役者だね。しかも役者魂がなくて怒られたってところか」

「分かるの?」

「そりゃ俺は役者魂を持った魂だからね。乗り移ってやろうか?俺と一緒に最高の演劇やろうぜ」


こうして私は、役者魂を手に入れたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る