第515話 覆面浪人

大学の入試で落ちてしまった。だが僕はどうしてもあの大学を諦められない。両親に土下座して頼み込んで、なんとか一浪させてもらう事になった。そして僕は予備校へと通い始めた。予備校では僕のような不合格になった浪人生が沢山いた。なんだか仲間意識のようなものが芽生えていた。


「君は現役生?」


僕は隣に座った男に話しかけた。これから一年間、長い浪人生活が始まるんだ。友達の一人や二人くらい作ってもいいだろう。


「おー?そう見えちゃうー?実はね、俺。浪人生なんだよね♪」


ノリの軽い奴だった。そいつは浪人のくせに、なんだか楽しそうだった。


「大変だよね。親とか説得するの」

「まあね♪そうだよね♪大変大変♪」


なんか絡みにくい奴だ。

それから一年。猛勉強の末、僕は大学に合格した。


「やったぁ!!」

「おめでとう。俺は落ちたよ」

「そうか。残念だったな」

「嘘♪俺現役合格♪」


奴は覆面浪人だった。

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