第438話 過疎地域の郵便ポスト

限界集落と言われる白鳥町。人口は、高齢者が数十人しかいない過疎地域だ。郵便局の配達員として働く俺は、わざわざ白鳥町に訪問するのが面倒だった。どうせ手紙なんて一枚も入っていないんだから。

ある時の事だった。いつもどおりどうせ何も入っていないと思いながらも、仕事だから仕方なく白鳥町の郵便ポストを開けた。すると珍しく一枚だけ手紙が入っていた。俺は手紙を取り、配達に回った。届け先の住所に到着し、ポストに投函すると子供が急いで家から飛び出してきた。


「おばあちゃんからの手紙だ!!」


子供は、はしゃぎながらポストの手紙を取って家の中へ入っていった。


そして俺は、また翌日に白鳥町の郵便ポストを開けた。今日は一枚も入っていない。


「いつもありがとうね」


声をかけてきたのは、おばあさんだった。


「昨日、孫に手紙を出したの。孫と文通してるの」


おばあさんは、とても楽しそうに話した。

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