第416話 柿の種

その男は、突如俺の家にやってきた。

「殺したいほど憎い人がいますよね?お手伝いしますよ」

「……あんた何者だよ」

「そうですね。では、柿の種とでも呼んでください」

「ふざけてるのか。突然人の家に来て偽名を使って。しかも殺しを手伝いますだなんて。帰ってくれ」

「証拠は残りません。この毒入りの柿を食べさせるだけです。食べた人間は、二日後に亡くなります。特殊な毒を使っています。毒は検出されません。ただし人の命を奪うのですから、それ相応の報いを受けてもらいます」

「報い?」

「あなたの命以外の大切なものを一つ頂きます」

俺の両親を精神的に追い詰め、自殺に追いやった不動産会社の社長を許せない。殺したい。俺は柿を受け取り、奴を殺した。

復讐を果たし、前を向いて生きてきた。それから数年後、俺は結婚して妻は妊娠した。

そして出産の日、子供は産声をあげる事はなかった。子供の腹には、柿の種が付着していた。

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