第391話 足音

「何かあるんですか?」

「この部屋は事故物件というやつでして、相場よりもお安く提供させて頂いております」

「何か怪奇現象が?」

「足音が聞こえるんですね」

「それだけ?」

「はい」

「よし、じゃあこの部屋にします」


俺は格安の条件で、事故物件に引っ越した。足音が聞こえるらしいが、俺に霊感なんてない。問題ない。


ドタドタドタ……。

引っ越したその日の夜、誰かが部屋を走り回る音がした。


「うるせぇ!!眠れないじゃねぇか!!静かにしろ」


しかし足音は、止まらなかった。翌日、俺は夕食を作ってテーブルに並べた。


ドタドタドタ……。

そして足音は、テーブルの前で止まった。


「ん?なんだ?お前も欲しいのか?」


それから俺は、二人分の食事を用意するようになった。


「……がとう。……ありが……とう」


初めて見た幽霊は、小さな女の子だった。こうして幽霊の少女との奇妙な共同生活が始まった。

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