第390話 鎧

歴史記念博物館に飾ってあるのは、戦国時代に鬼人として恐れられた宮下六三郎の鎧だった。


「これ本物ですか?」

「ええ。本物です。この黒くなっているのは、全てが宮下六三郎が敵を斬った時に付着した血液です」

「うわぁ、マジですか……」


よく見ると、確かに黒い染みが付いていた。


「宮下六三郎は、さぞ強かったんでしょうね」

「ええ、それはもう……。戦場で宮下の名前が出ただけで敵が引いたと言います」

「うわぁ……。凄いなぁ」

「隣に飾ってあるのが宮下の武器です」

「んっ……?これは……?包丁?」

「はい。宮下が愛した包丁です」

「変わった武器を使うんですね」

「いえ、何も変わっていませんよ」

「いや、だって武士は包丁使わないでしょ。これじゃ料理人だ」

「ええ。宮下六三郎は、料理人ですから。武士達の料理を毎日、作っていたのですよ」


よく話を聞いてみると、鎧に付いた血は魚の血らしい。

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