第379話 豆移し

これは一体どういう状況なのか。私は今、背中に銃口を押し付けられている。生命の危機が迫っている事だけは分かる。ここは逆らわず、大人しくヤツの言う事に従った方が得策であろう。


「そこの机の前へ出ろ」


私は恐怖で足を震わせながら、机の前へとゆっくり歩く。


「いいか。変な真似は考えるな。もし抵抗すればお前の体に穴が開くと思え」


私は頷き、ヤツに手の縄を解いてもらう。


「左側の皿の上に小豆が乗っている。この小豆を箸を使い、右側の皿に落とさないように移せ。もし落としたらお前の体に穴が開くと思え」


カチャッと銃口を背中に押し当てられる。


「こ、こんな事に何の意味が……」

「暇潰しさ。お前の家族が身代金を用意するまでのな。気が変わったのさ。お前の命を助けるか助けないか。この豆移しで決めよう。どうだ、面白い余興だろ?」


命を賭けた豆移しが始まった。

私は手を震わせながら必死に豆を移す。

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