第376話 汚れた靴

俺は、野球部の練習を終えて泥まみれで帰ってきた。


「おかえり。ユニフォーム洗うから洗濯に出しておいてよ」

「うっせぇな!!わかってるよ!!」


思春期だからか母さんの言動がうざく感じる。俺はユニフォームを乱暴に洗濯籠に入れ、自分の部屋へと行く。

翌日、グラウンドで練習をしていると母さんが階段から落ちて頭を打って倒れたという知らせを受けた。慌てて病院へ向かったが、母さんは帰らぬ人となった。


「母さんな、お前の誕生日プレゼントを用意していたんだ」


呆然とする俺に父さんは言った。そして俺は、野球の靴を貰った。どうして母さんにあんな風な言い方しかできなかったんだろう。戻って謝りたい。悔しくて涙が出た。靴の中から手紙が出てきた。


「毎日練習一生懸命頑張ってね。将来は野球選手になって母さんを楽させてね。泥だらけのあんたは素敵よ」


難しい事を言う。

俺は、汚れた靴で今日もグラウンドを走り回る。

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