第375話 日焼けサロン

どうやら次は、俺の番らしい。


「……それじゃ行ってくるよ。皆元気で過ごせよ」

「兄ちゃん。行かないで!!」


小さな弟が俺の足に必死にしがみついた。俺は、弟の頭の上にぽんっと手を乗せていった。


「お前もいつか旅立ちの時がくる。立派な男になれよ」


弟は別れの時を泣いていた。


「お前、本当に日焼けサロンに行くのか?」

「ああ、行くよ。俺は選ばれてしまったようだからな」

「……怖くはないのか?」

「怖いさ。俺のこの肌の色がこんがりと焼けてしまう事には、さすがに少しは抵抗があるさ」

「……だが勤めを果たすんだな」

「ああ」

「今なら逃げられるぞ」

「逃げられないさ。もう俺は、箸で掴まれているんだから」


俺は大切な家族や友人達に見送ってもらい、日焼けサロンに出かけた。

いいや、日焼けサロンではない。


俺は牛肉。

焼肉になるべく、ホットプレートの上に持っていかれる。


……これも運命なのさ。

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