第369話 紅葉桜

彼に誘われ、ドライブに来た。


「ビックリするものを見つけたんだ。君に見せてあげたくて」

「ビックリするもの?何?」

「それは着いてからのお楽しみ」


とにかく凄いと彼は、興奮気味に語る。どんなものを見せてくれるというのか。車は、どんどん山奥へと進んでいく。昼間だというのに生い茂った沢山の木のせいで、まるで魔女の森。そんな印象を持つ暗い暗い不気味な山奥へと入ってきた。


「……ね、ねぇ。随分と走ったよ。こんなに山奥なの?道合ってる?もしかして迷った?」

「いいや。迷っていない。大丈夫だから。この先だよ」


更に山奥を車で走っていく。まさか彼は、山奥で私を殺して死体を埋める気なんじゃ……。そんな事まで考えてしまった。


「着いたよ!!あれを見て!!」

「うわ!!何あれ!!」


そこには、紅葉のような鮮やかな色をした桜の木があった。新種だった。

それは、まさに紅葉桜という名前がピッタリだった。

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